BEYOND

2022. 6/17 → 7/8

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EXHIBITIONS

この度、Gallery Ryoでは6月17日から7月8日の会期にて谷敷謙と川原隆邦による企画展「BEYOND」を開催致します。

谷敷は、江戸時代にルーツを持ち、寺社建築の端材を人形に用いることで生まれた木目込みという日本固有のテキスタイル技術を再解釈し、使用する素材を古着や廃材に絞り、元々の持ち主に由来する身体性、時間、生の感覚、そして素材となる古着が元来そなえていたブランドコンセプトを汲み取り、絵画という形態に置換しながら語り継ぎ、それと同時に祈りや願いを込めるという木目込みや伝統工芸に特有の文化や価値を現代へリプレイスしています。

 

対する川原は、22歳の頃より最後の蛭谷和紙職人のもとで研鑽をつみ、現在は担い手が少なくなった材料そのものから和紙をつくりだすという実直なスタイルで和紙制作を行っています。「残すだけではなく、先に進めること、進化と向き合うこと」と語る川原の生み出す和紙は、技術や伝統にただ組みするのはなく、現代的な視座を交えながら新たに再解釈し、和紙という世界が持っている可能性を引き出していく姿勢が伺えます。

 

ベースとなる古着のビビットな色彩を活かした谷敷、紙の持っている静かな物質性を損なうことなく造形化する川原。それぞれが最終的にアウトプットする作品のビジュアルやニュアンスは異なるものの、しかし二人には木目込みと製紙という工芸的な手技に誰もが思わなかった新しいベクトルを与えている点、そして素材に潜んだ価値を引き出す強い、あるいはひそやかなダイナミズムにおいて共通性を持っています。

 

人形制作に使われる木目込みを絵画へ引用すること、本来はメディウムに留まりがちな紙それ自体の薄さや重さに着目しながら表現を試みること、つまり本来的に与えられた志向性を逸脱しながら新たな可能性を勝ち得ること。その大胆さは素材でも同様であり、二人は古着と樹木といった、言い換えれば人工物と自然物という真逆の素材を扱いながらも、しかし谷敷は古着から絵画を、川原は樹木から和紙を生み出すという、両者とも素材から作品への移り変わりにおける創造的な膂力の振り幅を強く感じさせます。

 

今回はそうした伝統や歴史を引き継ぎながらも革新性を失わずに自由に振る舞うこと、素材/事柄から新しい価値を引き出していく姿勢を、展覧会という形態によって体感する機会を目指します。また二人が用いている古着と紙はごくありふれた、日常的なマテリアル。そして会場となるスペースも住宅に近い、日常的な世界観。どちらも生活圏内にあるものですが、谷敷と川原はそこから特異で独特な作品を、そしてそれらをインストールした会場もまた同様の気配を装います。日常にアートをダウンロードすることで生まれる感性が華やぐ体験を、ぜひ会場でお楽しみください。